サッカー通になり海外旅行に行く国々のアイデンティティーを知ろう!

三菱ダイヤモンドサッカー

私はここ数年海外旅行に行くようになりました。
そこでツアーで一緒になった海外旅行のベテランの方が私が知っている初歩的な各国の民族問題や歴史から来る対立を知らないのに驚きました。
何故海外旅行初心者の私が知っていてベテランが知らないのかを探ったら、サッカーで得た知識が役立っていたのです。

一般的な観光ガイドブックでの紹介は歴史遺産や現地のグルメなどで終わっています。添乗員さんの説明もその範囲です。例えば、

この建築物はローマ帝国の○○○年に建設され、19○○年にユネスコ世界遺産に登録された
この地方は海に近いのでムール貝や魚介類の料理が名物。お薦めのレストランは○○と○○

ですね。
そこには、その国は現在どのような民族がいて現在どのような位置付けを持ち対立軸があるのかは示されていません

例えば、スペインのバルセロナがあるカタルーニャ地方はカタルーニャ人としてのアイデンティティーを持ちマドリッドを中心としたスペイン(カスティリャ)からの独立を求めています。これは、スペインサッカーを知れば必ず出てくる問題です。
サッカーで知ったその知識があればバルセロナの券売機などの表示で最初の言語がスペイン語でなく何故カタルーニャ語がある事が理解できます。バルセロナにスペイン国旗がなくカタルーニャ州旗しかないのも同じ理由です。

また、ナポリはカタルーニャほどではありませんが、過去のナポリ王国の歴史と近代化での南北格差からミラノを中心とした北部イタリアに対して反感を持っています。
セリアAのSSCナポリにいたアルゼンチン人のマラドーナをいまだにナポリの人が尊敬しているのは、単にサッカーでリーグ優勝しただけではありません。
経済格差で劣等感があった南部地域が裕福な北部のチームを破ってナポリのアイデンティティーを覚醒させたからです。

でもこのようなアイデンティティーを知るって地元の人と触れ合う時にとても大事です。この知識があって地元の人とコミュニケーションするのと知らないのでは相手への印象が大きく異なってくるはずです。
回りを海に囲まれほぼ単一民族で外国に征服されたことがない(第二次世界大戦後を除く)日本人には民族のアイデンティティーはなかなか理解されにくい事とは思います。
そのような日本の中で唯一サッカーがそれらを身近に知る重要な情報提供ツールではないでしょうか。すなわち、サッカーファンはサッカーを通して各国の民族問題やアイデンティティーを知ることができるチャンスを得ているのです。

しかし単にスカパーなどで海外サッカー観戦しても知ることはできません。
そこには知識がある解説者が必要です。また、単に選手の追っかけや戦術志向だけでもダメです。

私の時代は海外サッカー情報は豊富にありませんでした。
しかしサッカーが民族や国民性と深いつながりがあることを知らせてくれた知識豊富な方々がいました。むしろ今のテレビ解説者よりも多くの知識を持っていました。

三菱ダイヤモンドサッカー
三菱ダイヤモンドサッカー

そのひとりが「三菱ダイヤモンド・サッカー」で解説をしていた岡野俊一郎さん(元日本サッカー協会会長)です。岡野さんの解説は絶品。いまだに岡野さんを越える解説者は出てきていないと思っています。
その岡野さんから教えてもらったのが、サッカーは国民性が出るスポーツということです。そして、番組では各国の国民性などをマメ知識的に話されていました。
これらの話はいまだに鮮明に覚えています。私が行ったこともない国の国民性を知っているのは、この岡野さんの名解説によるものです。

後藤健生氏の世界サッカー紀行
後藤健生氏の世界サッカー紀行

もうひとりが世界各国をサッカー観戦している後藤健生氏。氏の著作「世界サッカー紀行」(1997年9月発行)は各国のサッカーが民族性などから来ていることを解説しています。
岡野さんの話が番組の内容から欧州と南米に限られていたのに対して後藤氏からはアジア、アフリカなどサッカー後進国の歴史、国民性を知るのに大変役立ちました
この書籍はサッカーライターとしてでなく慶應義塾大学法学部大学院政治学を卒業し、国際サッカー歴史記録学会アジア地区代表委員をしている氏の経歴がないと書けない1冊です。
現在「世界サッカー紀行」は絶版になっているようですが、図書館や古本屋で見つけたら是非読んで欲しいお薦めの書籍です。

このようにサッカーを知るとガイドブックに載っていない海外各地域の民族性やアイデンティティーが見えて海外旅行が一層楽しくなります
サッカーを知らない人はこの機会に是非サッカーを見て各国の国民性に触れてください。
また、すでにサッカーファンの方は贔屓チームの勝ち負けだけでなくそのチームの地域での歴史的背景と地元との結びつきを知って欲しいと思います。