初めて48カ国が参加したW杯が終了しました。
過去のW杯でもいろいろなトラブルがありましたが、今回のW杯は今までとは比べ物にならないくらいトラブルが多かった大会でした。
ただ、今までのトラブルはピッチ外がほとんどで、ピッチ内に関しては比較的平穏でした。しかし、今大会はピッチ内のトラブルが世間の大きな関心を集めたのが今までと大きな違いです。
今大会のピッチ内でのトラブルに関しては2つの流れがあります。
ひとつがFIFAに対して、もうひとつがVARに関してです。
各々について振り返ります。
FIFAへの信用喪失
最初はFIFAの信用喪失です。
大会前からFIFAに関してはかなり問題が発生していました。大会が始まってからもその流れは止まらずFIFAはますます信用を落とす事象を作り出していました。
なお、大会開幕前の出来事に関しては下記に記しています。
北中米W杯の横暴に対して米国を指導できないFIFA・インファンティーノ会長
今回はその中から3つを取り上げます。
・バログン選手へのレッドカード取り消し
・「ハイドレーションブレーク」採用による事実上の4クオーター制
・決勝戦の「ハーフタイムショー」
バログン選手へのレッドカード取り消し
何といっても今大会でもっとも関心を集めたのは米国代表・バログン選手のボスニア・ヘルツェゴビナ戦のレッドカードによる次試合出場停止の延期処置でしょう。
この信じられない処置によりバログン選手は出場停止のベルギー戦に先発出場しました。
サッカーファンならレッドカードで次の試合出場停止はだれでも知っているルールです。ファールの内容により出場停止試合数が増えることはあっても取り消しになることはありません。
それを主催国の大統領がFIFAに電話をし覆させたのですから問題にならないわけがないです。この事象はトランプ大統領が関わっていたためサッカー関連だけでなく一般メディアでも大きく取り上げられました。
FIFAは第三者機関の規律委員会が決定したのでトランプ大統領とFIFA会長の間で決定したのではないとコメントしました。
FIFAのインファンティーノ会長がトランプ政権にベッタリしているのを知っているサポーターはこのありきたりなコメントで納得するわけありません。
やはりというか、その後規律委員会は開催されず委員会会長の単独で判断したとの報道も出て黒い噂は深まることはあっても晴れることがない状況です。
「ハイドレーションブレーク」採用による事実上の4クオーター制
今大会採用された「ハイドレーションブレーク」。
これは選手ファーストではなくマーケティング優先のルール変更です。「ハイドレーションブレーク」の3分間での広告を許可したことで、莫大なスポンサー料金を支払った放送業者、配信業者は広告収入を増大(一説には数百億円とも)させました。
「ハイドレーションブレーク」を採用したため今回のW杯は前後半45分の試合ではなく22〜23分の4クオーター制のまったく別のスポーツになりました。
「ハイドレーションブレーク」についてFIFAは「夏場の高温多湿や移動距離を考えた選手保護という目的」と説明していますが、それを信じているのは従順なメディアだけ。周辺事情を知っているサポーターにはそれが真っ赤な嘘だというのは明らかになっています。
なぜなら、日本代表が試合を行ったダラススタジアムなどは完全ドーム形式で冷蔵完備です。外部がどんな高温・多湿でもスタジアム内は適切な温度に保たれ、今までの1分間の給水タイムも必要ない環境になっているのですから。
決勝戦の「ハーフタイムショー」
サッカーの競技規則にはハーフタイムは15分を超えないようにと明記されています。競技規則はサッカーの試合を成立させる前提です。なのにFIFAは自らその競技規則を破りました。
FIFAは米国観客向けのエンターテイメント性を強化するため「ハーフタイムショー」の実施を決定しました。するため決勝戦のハーフタイムが30分に延長になりました。
ここにもスポンサーファースト、興行ファーストのマーケティング優先で選手ファーストの考えはありません。
自分で作った競技規則を自ら破り、また「FAIR PLAY」の旗をかかげ選手にフェアープレイを要求しているくせにFIFA自らルールを平然と破る矛盾です。
VARへの信用喪失
また、VARに関しても複数の問題点が噴出しました。今回は代表的な下記の3事例を取り上げます。
・イラン代表vsエジプト代表
・アルゼンチン代表vsエジプト代表
・イングランド代表vsノルウェー代表
イラン代表vsエジプト代表
まずひとつ目が、グループリーグG組の第3戦イラン代表vsエジプト代表です。
後半アディショナルタイム。イラン代表が得点しましたがVARの介入により取り消しになった事象です。
最初、イラン代表モハンマド・ゴルバーニ選手が放ったシュートはエジプト代表GKウファ・ショベイル選手がブロックしました。そのこぼれたボールがイラン代表ジョジャエ・ハリルザゼ選手の前に転がり、ハリルザゼ選手がシュート。ゴールネットを揺らしました。
しかし、VARが介入しゴルバーニ選手のシュートの際のハリルザゼ選手の位置がオフサイドとの判定でした。
VARの映像はゴルバーニ選手のシュートの時のハリルザゼ選手の位置でオフサイドを判断しています。でも、ゴルバーニ選手のシュート時にハリルザゼ選手はまったくプレーに関与していません。オフサイドポジションにいてもプレーに関与していなかったらオフサイドにはならないのがオフサイドの規定です。
さらに、ハリルザゼ選手のシュートは相手GKショベイル選手からのこぼれなのでハリルザゼ選手のオフサイドもありません。
今大会前からのイラン代表に関してのいろいろな妨害工作があった経緯からもこのオフサイド判定はイラン代表を決勝トーナメントに出させたくないFIFAと米国政府の意向と勘ぐりたくなる事象です。
アルゼンチン代表vsエジプト代表
エジプトの選手が自軍の深い位置(ほぼ自軍のゴールライン近く)からドリブルとパスでアルゼンチン選手にボールを触れさせずシュートし得点しました。
しかし、自軍近くでアルゼンチン選手からボールを取ったプレーがファールだったとVARが介入し、得点が取り消しされました。その結果、100m近く戻ってアルゼンチンのFKで試合再開となりました。
確かに現在のVARの適用ルールでは得点時はそのプレーが始まった時点まで戻り検証するとなっています。
ですが、ファールがあったと言われる時点から100mもプレーが移動し、かつファールから得点まで10秒以上の時間があったのです。
VARの適用ルールからは正当でしょうが選手だけでなく観客の視点からは違和感しかありません。杓子定規に運用するのではなくこのように観客に違和感を感じさせるならVARの運用規定を見直すべきです。
今回の判断は審判サイドにVAR絶対主義が蔓延していることを示した事象だと感じています。VARの始まりは主審のサポートだったはずですがいつの間にかVARが主審を差し置いて主役に位置しているのが昨今の現状ではないでしょうか。
イングランド代表vsノルウェー代表
ノルウェー代表GKオルヤン・ニーランド選手が蹴ったゴールキックがピッチ上部のカメラを吊るしているワイヤーに当たり真下に落ちました。そのボールの落下地点にいたイングランド選手からのプレーで得点が生まれたのです。
ノルウェー代表の選手、ベンチがアピールしましたが判定は履がいらずイングランド代表の得点が認められました。
イングランド代表はこの得点で前半終了時に同点でハーフタイムを迎えることができました。前半終了時に0-1と1-1ではハーフタイム、後半の戦い方に大きな影響があります。事実、イングランド代表は2-1の逆転で勝ち上がりました。
ノルウェー代表側の抗議に対してFIFAはボールに埋め込まれ散るセンサーの反応を理由に判定が正しいとコメントしました。しかし、その判断の元となったデータは開示されていません。
そもそも、ひとりやふたりではなく多くのノルウェー代表選手、ベンチのスタッフが目撃しましたのが無視されたのです。
FIFAは現場にいた複数の選手やスタッフの目よりもそこにいないデジタルの数値が唯一信頼する指針としているようです。FIFAは盲目的なデジタル信者、あるいは機械の奴隷といえるでしょう。
VARって正しいの?
今大会が終わって大きな問題点として出てきたのが、
VARってホントに正しいの?
です。
主審をサポートするためにデジタル機器で誤審を正す、という理念でVARが導入されました。つまり、VARは誤審をなくし対戦する両チームに公平な判定を提供することです。
選手もサポーターも今までその理念を素直にそれを信じていました。しかし、今回のW杯でそれが建前だと白日の下にさられました。
なぜならVARをチェックしているのも人間だからです。
つまり、どの事象をVARの対象にするか否かの判断はVAR担当者に任されます。ということはVAR担当者の恣意的運用が可能になっているのです。
VAR担当者が恣意的運用をする、というわけではなくそのような建て付けになっているということです。
そのことをサポーターは実は薄々感じていたのです。
でも、そんな恣意的運用は同じサッカーを愛する人としてあり得ないと性善説に拠って信じていたのです。
でも、今回のW杯でその前提が疑われる事象が頻発したことで多くのサポーターが薄々感じていたVARの運用に本格的に疑問を持ったのです。
今問題視されているのはVAR担当者の判断ミスではありません。
VAR担当者が外的要因、たとえば主催者やスポンサー、政治的要因などで判定が恣意的に適用されているのではないかという疑念です。
そもそもVARはデジタル機器を使いながら最終判断を人間が行うという点で外的要因がないことを証明する手段が存在しません。ゆえに、そのような疑いを持たれたらそれはSNSなどを通じて拡大され続けます。
現在、SNS上ではVARがあるのにアルゼンチン代表とメッシ選手はフォールを取られないで有利な判定ばかりになっているとの噂にあふれています。これもVARの恣意的適用の疑惑が根底にあるのです。
失墜したVARの信用を回復するにはVARの運用をオープンする以外にないでしょう。
しかし、現在の腐ったFIFAにサポーターの疑念をはらす行動ができるとは考えられません。
そもそもサッカーにVARは本当に必要なのでしょうか?
私は「誤審も含めサッカー」という言葉が好きです。
結局、人間がジャッチする限り誤審が発生するのは当然。しかし、その誤審は自チームに常にマイナスになることはありません。誤審により利益を得ることもあります。
サッカーをプレーしていれば長いシーズンをトータルすれば誤審はイーブンになると理解しているはずです。
なので、サッカーという競技になぜそんなに正確性を求めるのか不思議です。
私がVARを否定している大きな理由は得点を選手、サポーターを含めみんなで喜べなくなっているからです。
得点が少ないサッカーという競技。その少ない得点だからこそ選手とサポーターが一緒に喜ぶのはサッカーの醍醐味です。
でも、サッカーの醍醐味をスポイルしているのがVAR。なぜ、得点を喜ぶのにVARの結果を待たないといけないのでしょうか。長いと数分間のタイムラグが生まれるようなシステムはサッカー競技に適しているとは思えません。
私はハンドもオフサイドの誤審もOKと考えています。人間なんだもの。
ただ、得点が少ないサッカーだけに得点の判定に誤審を少なくするシステムを導入するのは賛成です。
それはVARではなくゴールラインテクノロジーで十分。これならコストはVARの数分の一になるはずです。
私はデジタル化でなく「ゴールライン審判(Additional Assistant Referee)」で十分と考えています。
今は忘れ去られているかも知れませんが、10年ほど前ゴールライン上に得点か否かを判断する追加審判を置いた時期がありました。
これなら機器のコストは発生しませんから予算の少ないリーグでも採用できます。何よりも、得点の判定のタイムラグが発生しないのが一番のメリットです。
ゴールライン審判は将来の主審、副審の養成にもなりますので無駄のないシステムだと思います。現在も規約上は残っているので採用することは可能です。
それ以前に私はVARに利権の匂いしかしません。
VARを国内リーグで採用するには数億円の経費が必要とのこと。導入後もランニングコストが発生します。Jリーグでさえ即導入できないほどの財政的大きな負担となっています。
そんな巨額の出資をVARにしても誤審は発生しています。つまりVARはパーフェクトではないのです。
ならば素直に「誤審も含めたサッカー」に戻ることで試合のテンポを改善し、一緒に盛り上がれるサッカーの方が嬉しいです。
まとめ
2015年、FIFAは汚職事件などで当時のプラッター会長や中南米やアフリカの理事が辞任をさせられました。汚職事件の関係者が辞任したことでFIFAが浄化されることが期待されました。
しかし、プラッター会長の後を引き継いだインファンティーノ現会長はプラッター前会長以上に黒い噂が絶えませんでした。
また、プラッター前会長はFIFA内部では問題を起こしましたが、競技としてのサッカーそのものを破壊することはしませんでした。ところが、インファンティーノ現会長は今回のW杯で明らかになったようにピッチ上でのサッカーを破壊し始めました。
今では、ピッチには手を出さなかったプラッター前会長の方が何倍も良かったという感想を持っている古くからのサポーターは多いのでないでしょうか。
さらに一部の報道によると来年のFIFA会長選はインファンティーノ現会長の再選が確実とのこと。
これだけサッカーを内外からぶち壊していますが、サッカー界で絶対権力を持っているFIFAに刃向かうことは不可能なのでしょうか。
FIFAを改革するにはどのようにすれば良いか教えて欲しいと切実に思っている今日この頃です。







コメント